ロマンスは突然に

鮮やかな色彩でもって

ボクの瞳に飛び込んできた

 

 

 

PANDRA BOX

 

 

 

「ま、待って、あっくん!?」

 

 叫ぶなり、千石はここがホテルのロビーなのも忘れて、反射的に走り出した。

 ラウンジの囲いを飛び越え、めんどくさいので連れ・・と言っても、おなじみの親友・南クンにカードを放り投げ。

 背後に慌ててる気配をカンジながらも「好きなだけ食べてて〜!!」と言い残して返事も聞かずに加速する。

 

「あっくん!!あっくん!!STOP!!なんで逃げるの〜!?」

 

 スプリンターも真っ青の速度で走っているのだが、そこはそれ。

 逃げる方も追いかける方も、並みの反射神経及び運動神経ではないので、ホテルの宿泊客の間をすり抜け、足音も立てずに駆け抜ける。

 

「あっくん〜!?止まってくんないと、意地でも捕まえてチュ〜するよ〜!!??」

 

 何事か、と振り返る人波を意にも介さず、千石がのほほんと言い放つ。

 これくらいの距離では、全力疾走しても息すら切れていないのがテニス部たる所以なのだが、それがまた一般人から見て不気味だ。

 微笑さえ浮かべて、先を行く強面の長身・銀髪の青年・・に見える、を、ほえほえしたオレンジ頭の少年が高速で追いかけているのだから。

 

 ・・しかも、天下の、高級ホテルのロビーで。

 

「アレ?反応ナシ?・・じゃ、捕まえちゃおうっと♪」

 

 いつもなら、キスだの好きだの抱きしめたいだの。

 口にするだけで、手が出て足が飛び、ついでに煙草と頭突き攻撃まで辞さない亜久津が。

 ただ無言で、なんでそこまで必死よ!?というダッシュを掛けているのだ。

 千石の顔に、にや〜っとした獲物を見付けたような笑みと同時に、不思議そうな色が浮かぶ。

 

「あ〜っくん、コケないでね〜!!」

 と言いつつ、千石が利き足に力を入れてさらに加速。

 常々、チビだチビだと亜久津に言われるたびに「小回りが利いていいんです〜♪」などと言っていたのは、伊達ではないらしい。

「・・よっ!!」

 かけ声と共に。

 目の錯覚かな?って思った、滅多に見れない亜久津のスーツの端を掴もうとした途端。

 

 

「!?」

 

 上等の動体視力に、白い残像。

 

 

「うわ、びっくりした〜!!…って、あっくん、コレ!?」

 

 

 反射的に手を伸ばして、それを一端両腕で抱き込んだ。

 

 もちろん、走る速度は落ちない。

 手の中にある真っ白な花の集合体をチラっと見遣って。

 千石はマジマジと先を駆ける藍藤のスーツを見。

 その背中で、ひらりとテールが翻るのを追いかける。

 

 

 

「ちょっ・・!!あっくん、何オレにナイショで花嫁さんになってんの!?」

 

 あっくんのお婿さんはオレっしょ!?

 

 

 

 ゴージャスな赤い絨毯を遠慮もなく踏みしめながら、千石が受け取ったブーケと思しき物体を振り回して亜久津を追っかけ続ける。

「・・ウッサイ!!テメーこっち来んじゃねぇ!!」

 廊下の端まで来ると。

 亜久津はダンッと踏切をつけて、螺旋階段の手すりを足場にして中程に飛び乗った。

 そして、長い足で3段飛ばしに駆け上って行く。

 

「うっわ、やっぱあっくんスゴイや〜!!」

 

 続いて階段を後ろから登る。

 どこか目的地があるのか、亜久津はどんどんと上を目指して足を止める気配はない。

 息を切らせた様子もなく、ただ映画に出てくるアクションシーンのようにただひたすら上へ。

 頂上に着いた途端に飛び降りたりしないで欲しいんだけど、と思いながら、同じく千石もバテる素振りも見せず、花束抱えて階段を登っていく。

 

「う〜ん、いったいどこまで続いてんだろ、コレ?」

 

 思わず、確認。

 

 そこで。

 

 ふと下を見下ろした千石が暢気な声で、1周半ほど先を行く亜久津に声を掛けた。

 

「あ〜っくん、なんかキレーなおねぇさんたちがイッパイいるんだけど〜!!」

「あーそーかよ!!よかったなぁ!!」

 螺旋階段の下には、何故か鈴なりの女性軍。

 千石の目がキラキラしているのは、見なくとも分かる。

「あ、あっくん、ヤキモチ〜?大丈夫だよ、オレあっくん一筋だから!!」

「ネゴトは寝て言え!!」

「やだなぁ〜、ちゃ〜んと起きて愛しのあっくん追っかけてんじゃん?」

「愛しくねぇ!!」

「あはは。素直じゃないねぇ、まぁそこが可愛いんだけどvv」

「眼科と脳外科行け。」

「ついでに精神科も、とか言うんしょ?あっくん優しい〜♪」

「とっとと検体ンなっちまえ!!」

「え〜?解剖したら、オレ血液まであっくんラブなカンジよ?」

「…はぁ?」

「きっと静脈血までキレーなピンクvv」

 鼓動でエイトビートなラブを刻んでるよ?

「いっぺん、地獄へ堕ちろやっ!!」

「や〜ん、あっくんに逢えない日々はいつでも地獄です〜!!」

 

 

 だから、そんなあっくんに全速力で逃げられちゃうと、スッゲ傷ついちゃんですよ?

 

 

「・・そろそろ、限界?」

 

 千石が、口の端に笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 ダンッ!!

 

 

 

 

 

「・・!?」

 

 いきなり、目の前に、ナニカが降って湧いた。

 物理的に、ありえない。

 ありえないが・・

「・・あ〜っくん、つっかまえた〜♪」

 

 …………なんで、抱きしめられてんだ???

 

 

 

「せ・・オマエ!?」

 

 ネイビーブルーのパーカー。

 甘い香りのする、柑橘色の髪。

 ヒトを小馬鹿にしたような声と。

 

「ふふ、愛の力で、花嫁さんを攫いに参りました☆」

 

 ひどく冷たい、リアルな・・

 

「・・ウソくせー・・」

「あ、ヒドイvv」

 

 指先。

 

 

 

 

「そうだね〜、17階、か。あっくんにしては頑張った方だよね〜☆」

 チラリと階段脇を見れば、シックな金プレートに階数が表示されている。

「・・テメーが邪魔しなきゃ・・」

「あはは、そうだね。もう半分くらい軽いよね〜。

 オレなんか、この間の雨の日、南ちゃんに捕まって自主トレN館乗降ダッシュ×250だったし。あっくんサボッてもうけたね〜!!」

「・・ぜってー行かねー・・」

「そういわないでよ〜。南ちゃん、伴爺の「おやおや」なニマニマ攻撃に肋間神経痛気味なんだからvv」

「・・痛テーだろーがアリャ・・」

「うん♪差込みっ!!てカンジ。」

「?テメーもか?」

「まぁね。でも今は治ったっポイよ?」

 

 だって、あっくんに逢ったから。

 

「痛んでる暇、なくなっちゃったんだもん。」

 

 クスッて笑うと、目の前の亜久津の頬が赤くなった。

 

 

 

 

 

 

「・・でさ?なんかさ〜、あっちから着飾ったオネーサンたちが突進してくるんだけど、あっくん逃げる〜?」

 螺旋階段の途中で立ち止まって話していたんだけど。

 18階の方から、パタパタと音がして、綺麗なパステルカラーが沢山翻るのが見えて。

「・・チッ、しょーがねーなぁ・・」

 舌打ちしたあっくんが、チラッとオレの腕の中に目をやった。

「うん。じゃ、逃げよっか〜?イロイロ聞きたいんだけど、今はダメみたいだよね。」

 

 鬼ごっこは好きだった。

 手がかりを残して、わざと距離を近づけて。

 隠れん坊になってしまわないように、いつも鬼に追いかけられてた。

 

「フン、別にテメーはいんねーよ。」

「ま〜ま〜、そう言わないでさ〜♪あっくん、『逃げる』の得意じゃないっショ?オレそ〜ゆ〜の要領イイから一緒にいたらお得よ?」

 

 それに、コレ、返してあげないよ〜?

 手の中の花束を振ると、眉間に皺。

 悩んでる、悩んでる☆

 

「どうする?あっくん〜?」

「・・せいぜい、足引っぱんなよ・・」

 

 近づいてくる気配に、亜久津の決断は即座で。

 言うが早いか、今度は駆け上がってきた階段を逆走し始める。

 

「はい、は〜い♪」

 千石も、続いて亜久津の背を追う。

 手すりを掴んで、遠心力を調節しながら駆け下りると。

 上から、後一歩で取り逃がしたのを残念がるような声が聞こえて来た。

 

「…。あ〜っくん、あと2階降りたら、フロアに出てよ〜!!」

「あぁん?」

「い〜から!!」

 

 返事はなかったが、亜久津の足が、心持ち外へと逸れ出したのに、千石も手すりを離す。

 

 8・・7・6・5・4・3…

 

「出たら、ま〜っすぐ行ってね?」

 タン、と革靴が音を立て、亜久津がチラッと千石を一瞥すると、先を駆けていく。

「2つ目の角、曲がって右!!」

 しなやかなフォームで亜久津が走る。

 千石は目を楽しませながら、それを追う。

 

「ハ〜イ☆エレベーターにご到着〜!!」

 

 じゃん!!と登場した重厚な造りをした扉に、亜久津が「オマエは馬鹿か」という顔をする。

 追いかけられている人間が、逃げ場のない箱に乗ってどうするのだ。

「ま〜ま、いいから!!さ〜て、上と下、どっちが早いかなぁ〜?」

 ウキウキした様子で、千石が上下、両方の呼び出しボタンを押す。

 もはや、止めて止まるモノでなし、この男のことだから何か胡散臭いが確実に撒ける方法を考えているのだろうと、亜久津は溜息をひとつついて、花瓶の置かれたオ

ーク材で出きたデスクにもたれ掛かった。

 

「・・で?あっくん、どうしたワケ?女のヒトになんか追っかけられちゃって、チジョーノモツレとかだったら、オレ泣くよ?」

 思わずポケットから出した煙草は、「流石に禁煙です〜。」と取り上げられる。

「勝手に泣いてろ。・・ったく、優紀のヤツが・・」

「え?優紀ちゃん?」

 思いがけず出てきた名前に、千石がキョトリと目を大きく見開く。

 一瞬、しまった、という顔しながらも。

 亜久津も話さないで済むとは思っていないようで、煙草をくわえられなかった口元に手をやって、ポソポソと言葉を零した。

「優紀の仕事・・でよ。」

「あ、優紀ちゃんのお仕事関係なんだ?」

「あぁ・・。」

 母親である優紀には、どうにもこうにも頭が上がらないというか。

 基本的にオンナコドモには強く出るつもりがないのか、あっても大概は許容できてしまう亜久津。

 彼女絡みというなら、どんな無理難題でも、しかめっ面しながらも最後には聞いてしまうんだろうなぁ、と千石が苦笑する。

「優紀ちゃん、何のお仕事してんだっけ?」

「あ〜・・結婚式、とかの裏方みたいな・・」

「式場のお手伝い?」

「っつーか、相談?商談?・・あー・・プランニングの方。」

「へ〜!!優紀ちゃん、ウェディングプランナーなんだ〜!!スゴイ〜!!」

 そういえば、そんな映画もあったよね〜、あっくん見た?って聞くと。

 優紀に連れられて行った、との返事。

 ・・やっぱ、あっくん優紀ちゃんには甘いんだよね〜。

「ふ〜ん、でもさ、それでなんであっくんがスーツ着て、ブーケ持って、オネェサマ方に追っかけられてんの?」

 流石に生花を持って駆けまわるのは無理だということなのか、千石が手にしているブーケは、繊細な細工が施された造花だ。

 ただ、顔を近づけると甘い香りがして、なんというか・・造りモノにしては、随分と手が込んだモノのように思えた。

「・・ソレの柄んトコ・・」

「ん?コレ?」

 ブーケを振ると、亜久津が目線で千石が握っている部分を見遣る。

「そん中に、『賞品』が入ってんだとよ。」

「賞品?あ・・それで『追いかけっこ』、なんだ?」

「・・クダンネー・・」

「あはは。で、ちなみに何なの?賞品、ってさ。」

「アン?・・あぁ。海外挙式、ってヤツのタダ券。」

 

 ・・そりゃぁ、必死にもなりますわな。

 

「ふふ、で、あっくんは、その『広告塔』ってワケですか。」

 こんなに目立つヒト、あんまりいないもんねぇ。

 クスクス、千石がブーケに顔を埋めて笑う。

「知るか。朝の5時から叩っ起こされて、ンな動きにきー服着せられるわ、かけずり回らされるわ・・」

「でも、ちゃんとお手伝いしてるんだよね〜、あっくん♪や〜さしぃvv」

 キヨ、惚れ直しちゃったvv

 キャッ☆とシナを作ると、鉄拳が降ってきた。

 

「さ〜て。ようやくエレベーターも来たみたいだし・・あっくん、リミットは何時なの?」

 痛い痛い、と、本当に痛がってるのか不思議な上機嫌で2発目、3発目と亜久津の拳を避けた千石は、ポーンという音と共に口を開けたエレベータに片足を突っ込ん

で、体半分振り返る。

「見てろ・・」

 投げられたのは、小さなタイム・キーパー。

 確実に刻まれていく時間は、鼓動より早く数を減らしていく。

「わぉ。すでに結構逃げ切ったワケ?あっくん。」

「・・テメーの罰則といー勝負だ・・」

 それって階段往復250本のコト?

「え〜?オレの罰則じゃないよ〜?」

「他のヤツ等、何本よ?」

「ん〜?100本くらい〜?」

「2.5倍走ってる何処がバツじゃねーって?」

「だから〜vvバツじゃなくって、愛のムチvv」

「は、マゾには効いてねーたー、お気の毒だな。」

 話しになんねーと、切って捨てて。

 亜久津がドカッとエレベーターの奥に背中をつけた。

「・・で?」

「うん?あ〜、上行くヤツみたいだね。多分、18階に居た方、オネーサン達が乗ってソッコー降りちゃったんじゃない?」

 とりあえずRを押して、「あ、上、ヘリポートしかないんじゃん〜?」などと暢気に言っている千石に、亜久津は特に何も言わない。

 どうせ、タイムリミットはすぐソコだ。

「あ・・そうだ、あっくん・・」

「んだよ・・?」

 ツイ、と袖を引かれ、亜久津が意識をそちらに向ける。

 

 

 と。

 

 

(あ…?)

 

 

 体に、それ、と分かる・・

 

 

(トマル・・?)

 

 

 失速感が・・

 

 

 

 

 

 

 

 ポーン…

 

「あ、来たみたいよ・・!」

 エレベーターの前をさざめきが取り巻く。

 華やかなドレスを着て、宝探しのようなゲームは鬼ごっこのようで楽しかったけれど。

 タイムリミットを前に、背の高い銀髪のターゲットは姿を消してしまって、残念ね、なんて言いながら、せっかくだから上のスカイラウンジでお茶でもどう?という

ことになって。

 残っていた数人が、ようやく登ってきた上りのエレベーターが開くのを待っていた。

 

「え?」

「きゃっ・・!」

 

 ところが。

 

「あ、あの・・!!」

 

 ゆっくりとスライドした扉の奥。

 そこには、あの銀髪の青年。

 

 ブーケを持って。

 きっと本気で走れば難なく振り切れるのに、いつも視界の端に私たちを残すようにして、駆けていた・・。

 

 

「・・乗るのか?」

 

 あ、閉まる、と思った瞬間。

 青年が、ゆっくりとこちらを見た。

 色素の薄い、瞳と髪が、ゆらりと揺れる。

 淡いトーンのスーツの腕が、片手で扉を押さえた。

 

「い、いえ・・!!」

 慌てて数人が首を振る。

 思わず頬が赤くなった。

 

 

「・・ふぅん。じゃ・・」

 

 

 スッ、と腕が外れ。

 黒と金の扉が狭まる。

 その狭間で、白いブーケがチラリと揺れた。

 

 

 

 

 

 

「み・・見たっ!!??」

「見たわよ!!」

 

 わっ、とエレベーターを見送って、きゃぁきゃぁ言い合う。

「だ、大胆よね!?結構、格好いい子だったじゃない!?」

「フードで良く見えなかったけど・・」

「キスしてたよね?」

「してた、してたよ〜!!ゼッタイ!!」

「じゃぁ、あのコが、」

「え?違うデショ?」

 

 

 だって・・

 

 

「オトコノコ、だったんじゃない・・?」

 

 

 鏡に映った、フードから零れる髪は、ちょっとお目にかかれないような鮮やかなオレンジ色で。

 ウィステリアカラーの首元に回された腕と、その手に握られたブーケ。

 見間違えでなければ・・

 

 螺旋階段の、あの笑顔の・・

 

 少年

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ポーン・・

 

「テメーは馬鹿か。」

「や〜ん、あっくん、今、疑問符付いてなかったっショ〜?」

「・・ったりめーだ、このボケが。」

 

 エレベーターを降りてしまえば。

 なんてことはない、サークルにH字が模されたヘリポートだけがある空間。

 灰色のコンクリートと白のラインが入り乱れたモノトーンの世界に、亜久津の髪が似て非なる色で映える。

 

 取りだした煙草のボックス。

 強風で、なかなか付かない火に、チッと舌打ちが聞こえる。

 

「ハイ、どーぞ。」

 よく我慢しました、と千石がおどけて両手を衝立にする。

 風が遮られたところで、ようやく亜久津が煙を吸い込んだ。

「あ〜、空が青いねぇ。んん、ま、こんな風が強いんじゃ、あのオネーサマ方もここまでは来ないかぁ。」

 もったいないねぇ、と。

 心にもないコトを言う、と思われる発言で、千石が柵のない屋上の端に歩み寄る。

「テメーがアホなコトすっからだろーが。」

「え〜、そうかなぁ〜?結構、ウケてたみたいよ?ふふ、キヨくん女の子に見えたかしらぁvv」

「・・イカれたオカマくらいには見えたんじゃねーの?」

「ヒッド〜イ!!あっくんの為に、キヨ頑張ったのにぃ〜!!」

「な・に・を?」

 青筋立てながらの亜久津の一言。

 ご丁寧に母音ゴトに区切り付き。

「ヤン・ヤン♪わっかってるくせに〜vv照れ屋のキヨくんが一世一代の大決心で、あっくんにちゅ〜したのに〜!!しかも人前。」

 ハートマークを飛ばしそうな勢いでいて、最後にケロリと言い放った千石に、亜久津の血管がブッチリ音を立てる。

「オマエはぁ・・」

「なぁに〜?あ、そうそう。さっき聞きそびれちゃったんだけど。あっくんが逃げ切った場合ってどうなるの〜?」

 てか、そっちのほ〜が、確率高かったっしょ?

 

 ・・ま、今はオレが持っちゃってるけどね、ブーケ☆

 

「あぁん?・・別に。テキトーに引っかき回して、テキトーに撒いて、テキトーにリミットまで時間つぶしてろって言われたかんな。」

「あはは。やっぱ優紀ちゃんもあっくんが勝つって踏んでんだよね〜。」

「・・負けんのは好きじゃねー。」

「そうだよね〜!ま、じゃぁ、あっくんはイベントの花、ってことで♪」

 巧いことはぐらかして、千石がにっこりと微笑む。

 

 

「あ、そろそろかな?タイムリミット・・」

 

 紫煙が流れてくるのを、千石が鼻先をくすぐる煙草の匂いで感じる。

 

 亜久津が歩くと、今日はコツコツという音がして、なんだかちょっと大人っぽい。

 スーツなんか着ちゃってさ。

 

 花嫁さんかぁ・・

 

 

「ねぇ、あっく・・」

 

 

 

 

 

 クシャ・・

「ふっ・・」

 

 ちゅ・・

 

「え・・?」

 

 トンッ・・

 

 

「・・バーカ」

 

 

 

 ピピ・・ピピピピ!!

 

 

 

「あ・・あぁぁぁ、あっくんん〜!!??」

 

 

「・・テメーの考えてることなんざ、お見通しなんだよ。」

 

 キスしたばかりの唇を、グイッと拭って、亜久津が背を向ける。

 その手には、白いブーケ。

 目を白黒させている千石は、それどころじゃないだろうけど。

 

「い・・いま、いま、今!!あっくん、ちゅ〜した!?したよね!?してくれたんだよね〜!!??」

 

 千石が慌てて駆けつけようとする。

 

 すると。

 

 

「バーッカ。ただの駄賃だっての。・・やっぱテメーはチビだ、チビ。」

 

 俺様に膝曲げさせてるウチは、嫁取りなんて無理だね、バーカ。

 

 ピン、と煙草を指先で弾いて。

 

 

 

 

「あ〜っくん〜!!!」

 

 ニッと唇をつり上げた亜久津が、ひどく嫣然と笑って見せたのだった。

 

 

 

 

 THE GAME IS OVER!!

 

 

 

 ブーケは、無事。

 ・・花嫁の元に。

 

 

 

END


『いつも押し切られるので反撃したつもりの亜久津さんと、かまってもらって嬉しい千石さん』

という、すっごく萌vvなKari様から頂きました500HITリクなのですが・・!!

すみません、玉砕しました!!(号泣)

あっくんの反撃、実は最後のちゅう・・です。(遠い目)

千石さんは、もうあっくんが居るだけで嬉しくってしょうがないようですが!!

・・で、この話の何処にオチを求めるかと申しますと、おそらく「千石のヤツ〜・・」と言いながらも、律儀にラウンジでケーキを食べながら待っていて、

「さっきの男のコ達って〜vv」とキャワキャワ言いながら降りてきたオネー様方の話しを聞いてしまい、ダバーっと紅茶を零した南君で!!(笑)

すすすす、すみません・・!!(><)

こんなお話でよろしければ、謹んでKari様にお捧げさせて頂きます〜!!

本当にご申請をありがとうございましたvv

 

そして、ここまでおつき合い下さいました皆様、本当にありがとうございますvv

どうぞ、次回も遊びきてやって頂けますと、とってもとっても嬉しいです〜!!

 

 

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